転生したら頂きでした

ドラゴンズドグマオンライン
2015年8月31日より正式サービス開始し、発売初日で70万ダウンロードを達成した。 その後2019年7月4日に「今後もお客様にご満足いただけるサービスを継続して提供することが困難である」という結論のもとサービス終了が発表され、2019年12月5日21時をもって全サービスが終了した。wikiより抜粋

プレイヤーに愛され運営に愛されなかったオンラインゲーム
ほぼ生活の一部となっていて4年の歳月を私はレスタニアで過ごした
サービス終了から一年近くが経った今でもあれ以上のゲームには未だ出会えていない

レスタニアという仮想世界が崩壊した今、残ったものといえば
冴えない底辺キモオタの目を覆いたくなる現実世界の私だ

以前なら労働後にわかりやすい現実逃避の世界があり仕事にも精が出ていたが
拠り所を無くした今当然だが労働にも精が出ない
「帰ってドドンしよ」と言えてたあの頃が懐かしい

無気力、そんな言葉が今の私にはふさわしいと言える

そんな無気力かつフワフワした状態でも働かなければ生きていけない
私もご飯を食べたいので、

と、そんな事を考えながら本日の作業現場の中層マンションの足場を歩いていた

不注意油断怠慢だろうか、いや、今の私では当然、起きるべくして起きた

一瞬だった

私は足場に作業着をひっかけて前のめりに転びそうになる
ガタガタっと必死に体制を整えようと思うも私の身体は二歩三歩と前へもつれる

本来ならば建築現場の足場には転落防止及び工具や塗料の飛散防止としてメッシュシートが張られているが台風前という事でシートは畳まれていた

そして前にもつれ足場の角の比較的骨組みが少ないそこから無情にも落ちたのである

終わった

実にあっけない
高さ的にもうどうにもならない十中八九私の人生はこれで幕を閉ざす事だろう
脳が生存の道を探しフル回転しているスローモーションだ
しかしそれとは裏腹に私は冷静に迫りくる地面をただ見ている
ゆっくりだ、

遅延か

驚いた、最後の言葉はお母さんごめんなさいとかそんなものではなく
まさかのドラゴンズドグマオンラインの状態異常とは

飽きれとも言える笑みをこぼし
私は地面に迎え入れられる

ゴシャッ

私の脳にその音が響き渡ると同時に視界は閉ざした

暖かく冷たく不思議な感覚に暗闇の中で包まれる
もう身体という感覚もない
きっと数秒後私に訪れるそれを受けいれる他ない

ーん

ふーん

ふふーん

入眠にも近い感覚で無意識だったがゆっくりとだが目覚めのような感覚で意識が戻っていくのがわかる

恐ろしい程に冷静だ
きっと私は死んだ
死後の世界、思考だけの世界、そういった何かを信じている私にとってこの現状をすんなりと受け入れる事はそう難しい事ではない

かすかに聞こえる心地の良い音

…鼻歌の様な

次の瞬間、うっすらと光が刺し視界が開けた

目の前には紫色の布状のなにかが広がっていた
視界を右へずらすとどうやらベッドの様な所で仰向けになっているようだ
人差し指、中指が動く、身体の感覚

どうやら身体がないという世界ではないらしい

痛み等もない
ゆっくりと身体を起こす
視界には木造のような殺風景な部屋だとわかる

当然だが奇跡的に助かり搬送された病院というような現代的な造りではない

気づいた事がある

若干だが息苦しく視野も狭い
何かで顔を覆っているような

私はそっと右手を顏にやるとひんやりとした冷たい何かが顔を覆っている

私は板状のそれを外した

心拍が上がるのがわかる。

自分の衣類を見て鼓動は更に激しくなる

私は起き上がり左へふらふらと歩く
知っている、そこには浴槽がある事を

ゆっくりと浴槽へ向かい覗き込んだ
そこに映し出された男の顔を私はよく知っている

私は振り返る、何故ならそこにいるはずだから
心地よい鼻歌混じりで料理をしている彼女を知っているんだ
全てを理解した私はゆっくり近づき言わなければならない言葉を発した

「リー、ただいま」

彼女は料理の手を止めこちらに振り向き笑顔でこう言った

「おかえりなさいマスター」と…

続く

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